贈答用のワインは、味で選ぶものではありません。物語で選ぶものです。
ワインの輸出に携わっていると、「大事な方への手土産、何がいいですか」というご相談を本当によく受けます。今日はシリーズ最終回として、わたしがいつもお答えしている内容を、相場からNGまで全部書いてしまいますね。
相場は2段階だけ覚える
- 会食の手土産・ちょっとしたお礼: 5,000円〜10,000円
- お祝い・大きなお礼・節目の贈り物: 10,000円〜30,000円
これ以上高いものは、相手に「お返し」を考えさせてしまうので、よほどの関係でない限りおすすめしません。贈り物は、相手の心を軽くするものですから。
迷ったらシャンパーニュ。理由は「開ける場面」があるから
贈答ワインの正解を一つだけ挙げるなら、シャンパーニュです。赤や白と違って、シャンパーニュには「開ける口実」が要りません。おめでたい日、嬉しい報告、週末。どんな家庭にも開ける場面が必ず来ます。もらって困る人が、ほぼいないお酒なんです。
名前の通った大手メゾンなら、まず外れません。そこから一歩差をつけたい方は、小さな造り手が自分の畑のぶどうだけで造るシャンパーニュを。値段は同じでも、「大量生産ではない一本を選びました」という気持ちまで届きます。
「わかる人に伝わる」一本は、物語を一つ添える
パリで働いていたころ、贈り物の相談に来る常連の方に、わたしはいつもワインより先に「物語」をお渡ししていました。「この造り手は親子三代、この畑だけを守っています」。この一言が添えられた瞬間、ワインはただの瓶から、メッセージに変わります。
贈るときに全部を語る必要はありません。「造り手の話がおもしろい一本なんです」とだけ言えば、興味を持った相手が自分で調べて、あなたのセンスに二度感心してくれます。
これだけは避けたい、3つのNG
- 好みを確認せずに、重い赤の高級ワイン。力強い赤は好みが分かれます。迷ったら泡か白へ
- 自分の趣味全開の個性派。癖の強い自然派などは、ワイン好き同士とわかってから
- 常温のまま夏に手渡し。ワインは暑さに弱い生ものです。夏場は保冷バッグに入れるだけで、気遣いまで伝わります
まとめ — 贈り物は、選んだ時間ごと渡すもの
相場を守り、シャンパーニュを軸に、物語を一つ添える。それだけで、あなたの一本は「気の利いた手土産」から「忘れられない贈り物」になります。
5回にわたってお届けした「経営者のためのワインと会食マナー戦略」も、これで最終回。振り返れば、いちばん大事なことはシリーズを通してひとつだけでした。ワインの主役は、いつも目の前の相手。それさえ忘れなければ、あなたの会食はもう大丈夫です。
第1回: 会食のワイン注文、できる経営者は「選ばない」から読み返せます。

