1本のワインと、3週間暮らす — コラヴァンがわたしの晩酌を変えた話

おすすめワイングッズ

8月のパリは、街が空っぽになります。パン屋も肉屋も「9月に会いましょう」の貼り紙を残してヴァカンスへ。残されたわたしは夕方、静かなキッチンで棚のワインを眺めて、いつも同じことで悩んでいました。

今夜、これを開けるべきか。開けたら、明日も明後日も飲まなければいけないのか。

ひとりの晩酌に750mlは、正直、多いんです。いいワインほど「わたし一人のために開けるのはもったいない」が先に立って、結局いつまでも棚にいる。あの現象に名前をつけたいくらいです。

コルクを抜かない、という選択肢

その悩みを終わらせたのが、コラヴァン(Coravin)でした。細い針をコルクに刺して、グラス1杯分だけ注ぎ、抜いた針の穴はコルクが自然に塞ぐ。瓶の中にはアルゴンガスが入るので、残りのワインは空気に触れないまま眠り続けます。つまり——開栓しないまま、飲める。

最初に使った夜のことは、よく覚えています。ブルゴーニュの、ちょっといい赤。グラスに1杯だけ注いで、瓶をそのまま棚に戻す。その動作があまりに呆気なくて、少し笑ってしまいました。「開ける覚悟」があんなに要らなくなるなんて。

それから、わたしのワインとの付き合い方は変わりました。月曜にボルドーを1杯、木曜にまた1杯。1本のワインと3週間かけて暮らすと、開けたてと2週間後で香りの表情が違うことにも気づきます。これは、一気に飲んでいた頃には見えなかった景色でした。

正直な注意点もふたつ

推しだからこそ、正直に書きます。ひとつ、アルゴンのカプセルは消耗品で、グラス1杯あたり70円ほどのコストがかかります。ふたつ、樹脂製の合成コルクには使えません(天然コルク用の道具です)。この2点が気にならない方——つまり「いいワインを、少しずつ、長く」を求める方には、わたしはためらいなくすすめます。詳しい使い勝手は、以前書いたレビュー記事に写真付きでまとめています。

現行の定番はタイムレス モデル3+。5万円台のワイングッズは確かに贅沢品ですが、「開けきれないから」と高いワインを我慢してきた方なら、たぶん一番元が取れる投資です。

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今夜も、開けないまま1杯だけ。ヴァカンスで静まり返ったパリの窓辺には、それくらいの飲み方がちょうどいいのです。

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