世界のコンクールが選んだのは、1,000円のグラスだった

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高級ワイングラスの世界には、1脚1万円を超える名品がいくつもあります。薄く、軽く、美しい。ところが、です。世界のソムリエコンクールやワインの品評会でプロたちの前に置かれるのは、たいてい1脚1,000円ほどの、ずんぐりした小さなグラス。

種明かしをすると、これはINAOグラスと呼ばれるものです。フランスの原産地呼称を管理するお役所(INAO)が「ワインを公平に利くための形」として定め、のちにISOの国際規格にまでなった、いわば世界共通の物差し。パリ時代、店のテイスティングルームにもこれがずらりと並んでいて、月曜の昼、そこで来月のグラスワインを決めるのが習わしでした。生産者が売り込みに持ってくるサンプルも、必ずこのグラスで利く。高級グラスは使いません。

ワイナリーの樽貯蔵庫

グラスの個性を、消すためのグラス

おもしろいと思いませんか。名門グラスメーカーが「ワインを最高に見せる形」を追求する一方で、プロの現場は「グラスの影響を消す形」を選んだ。装いを剥がして、中身だけを見る。ワインの世界で一番フェアな道具は、一番安い道具だったわけです。

ご家庭でこれを持つ意味はふたつあります。ひとつは、飲み比べの基準器になること。同じ条件で並べると、ワインの違いが驚くほどはっきり見えます。もうひとつは、ソムリエ試験・ワインエキスパート試験の練習。本番はこの形で出てきますから、普段から慣れておくに越したことはありません。

注意点も正直に。ソーダガラス製なので、高級グラスのような薄さや輝きはありません。日常の食卓で使うと少し素っ気ない。あくまで「利くための道具」です。でも6脚そろえて5,000円台という価格は、ワインを学びたい人の最初の投資として、ほとんど反則だと思います。

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グラスの選び方そのものは以前の記事に書きました。華やかな1脚と、正直な1脚。両方あると、ワインの楽しみは倍になります。

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