秋の入り口は、白を一段濃くするだけでいい

おすすめワイン

パリのマルシェから、桃が消えました。

先週まで山積みだった台に、今朝は葡萄と洋梨が並んでいます。

八百屋の主人は「もう終わりだよ」と、当たり前の顔で言いました。

季節の変わり目は、天気予報よりも市場のほうが正確です。

今日から12回、秋の食卓とワインの話を書いていきます。

初回のお願いは、ひとつだけ。秋は、白を一段濃くしてください。

収穫を待つブルゴーニュの葡萄畑と、黄色く色づき始めた葉

写真は、収穫前のブルゴーニュの畑です。

葉がまだ緑と黄色の間で迷っている、9月のはじめ。

輸出の仕事で毎年この時期に通うのですが、畑の匂いが夏と違うんです。

草の青さがすっと引いて、土と落ち葉の湿った匂いが前に出てくる。

その匂いを吸い込むたび、ああ、白を替える季節だ、と思います。

夏の白は、秋の皿に負けます

夏のあいだ飲んでいた白を、思い出してみてください。

きんきんに冷やして、きりっとした酸で喉を鳴らす、あの1本です。

冷やしたトマトや刺身の隣には、あれ以上のものがありません。

ところが、きのこのソテーやかぼちゃのグラタンの横に置くと、急に痩せて感じます。

料理の側が、火を入れる時間もバターの量も増やしてくるからです。

秋の皿は、夏より重い。ワインだけ夏の服のままだと、押し負けます。

これは味の優劣ではなくて、体格差の話です。

実際、わたしも8月と同じ白をきのこのグラタンに合わせて、がっかりした夜があります。

ワインが悪いわけでも、料理が悪いわけでもない。組み合わせの季節が合っていなかっただけでした。

不思議なもので、同じ白を9月の暑い日に冷やして単体で飲むと、ちゃんとおいしいんです。

ワインと料理の釣り合いの考え方そのものは、料理合わせの基本の記事にまとめてあります。

「一段濃く」は、売り場で2つ見るだけ

難しいことはしません。ラベルで確認するのは2点です。

ひとつめは品種。シャルドネと書いてあるものを選んでください。

シャルドネはもともと味の輪郭がふくよかで、秋の皿と体格が釣り合います。

品種の見分けそのものが不安なら、白の品種2つの記事を先にどうぞ。

ふたつめは、樽で寝かせてあるかどうか。

樽を通った白には、バターやナッツを思わせる香りが乗ります。

裏のラベルに「樽熟成」「オーク樽」とあれば、それが目印です。

この2つが揃うだけで、グラスの中身は夏から秋へ引っ越します。

値段を上げる必要はありません。同じ予算のまま、選ぶ棚を変えるだけです。

わたしがパリの酒屋でよくやるのも、これと同じことです。

夏に通っていた棚の一段下、樽で寝かせた白が並ぶあたりに手を伸ばす。それだけ。

もうひとつ、お金のかからない工夫を。冷やしすぎないことです。

冷蔵庫から出して、10分ほど置いてから注いでみてください。

香りのふくらみ方が変わって、同じ1本が別の顔になります。

この手の一手間は、家飲みの格上げの記事にもいくつか書きました。

今週、1本だけ替えるなら

今日おすすめしたいのは、ブルゴーニュの樽熟成シャルドネです。

理由は単純で、この土地のシャルドネが、秋の料理と同じ速度で育ってきたからです。

造り手の家でごちそうになるのは、たいていバターとクリームの料理でした。

その隣にいつも置かれていたのが、樽で寝かせた自家の白。

あの食卓の記憶が、いまも「秋は白を濃く」の根拠になっています。

わたしの使い方は、金曜の夜。きのこをバターで焼いて、これを1杯だけ。

1本を2日に分けて飲むと、2日目のほうが香りが開いていて得した気分になります。

正直な注意点もひとつ。樽の香りは、好みがはっきり分かれます。

「木の匂いが強くて苦手」と言う友人が、わたしのまわりにも何人かいます。

だから最初は、樽の主張が控えめなものから試してください。値段の高いものほど樽が強い、ということもありません。

楽天でブルゴーニュのシャルドネを探す

Amazonでシャルドネの白を探す

次回は、きのこの話をします。

あの土の匂いに、なぜ赤が寄り添うのか。畑で教わった話があるんです。

ちなみに今朝のマルシェで、洋梨を買いすぎました。

今夜はこれを焼いて、開けたままの白を飲み切ります。秋の入り口は、だいたいこんなふうに始まります。

タイトルとURLをコピーしました