「魚に赤ワインって、やっぱり間違いなんでしょうか」。先日、日本の友人からそんな質問が届きました。
気持ちはわかります。本を開けば「肉に赤、魚に白」の先に、品種だの温度だの、覚えることが山ほど出てくる。
でも安心してください。フランス人の食卓は、そこまで考えていません。
輸出の仕事で付き合いのある同僚たちは、昼のビストロで豚のパテにその辺の赤を合わせて、実に幸せそうです。
あの気楽さこそ、ワインの国の正解だとわたしは思っています。
最初に覚える原則は2つだけです。色を合わせる。産地を合わせる。今日はこれだけ持って帰ってください。

まず、色を合わせる
料理の色と、ワインの色を近づける。1つ目の原則はこれだけです。
白いクリーム煮や魚の塩焼きには白。赤ワイン煮込みやデミグラスの茶色い皿には赤。
正確に言うと、見た目そのものより「ソースと味つけの濃さ」の色です。
だから同じ魚でも、マグロの赤身やブリの照り焼きなら、軽めの赤がすっと寄り添ってくれます。
冒頭の質問への答えはこうです。魚に赤は間違いではなく、「色の濃い魚料理なら、むしろあり」。
この物差し、実は和食にもそのまま使えます。醤油とみりんの照りは茶色だから、軽めの赤。
おひたしや白身の刺身なら、白。冷蔵庫の前で悩む時間が、これだけでぐっと短くなります。
白状すると、渡仏したての頃のわたしは、この原則を知りませんでした。
マルセイユ出張の夜、ブイヤベースに濃いボルドーの赤を合わせて撃沈。魚介と渋みがけんかして、口の中が大変なことになりました。
高い授業料でしたが、おかげで一生忘れません。
つぎに、産地を合わせる
2つ目の原則は、料理が生まれた土地のワインを選ぶことです。
アルザスの塩漬けキャベツの煮込みにはアルザスの白。ブルゴーニュの牛肉の赤ワイン煮には、ブルゴーニュの赤。
郷土料理と地元のワインは、何百年も同じ食卓で育ってきた幼なじみです。頭で相性を考える前に、歴史が答えを出してくれています。
ブルゴーニュの生産者の家でごちそうになった、ブフ・ブルギニョンと自家のピノ・ノワール。あの組み合わせは、いまだに忘れられません。
台所から鍋ごと出てきて、当主が「うちの畑の隣で育った牛だよ」と笑う。難しい理屈は、あの一皿の前ではひとつも要りませんでした。
おいしいものは、理屈より先に体でわかる。あの夜からわたしは、迷ったらまず産地の地図を思い浮かべるようになりました。
ロワールの山羊のチーズに、同じロワールのきりっとした白。これも同じ理屈です。
レストランで郷土料理を頼んだら、同じ地方のワインを指差す。それだけで、外さない注文になります。
それでも迷ったら、泡
とはいえ、色も産地もばらばらの料理が並ぶ夜があります。中華の日も、お寿司の日もある。
そういう夜の答えを、わたしはひとつだけ持っています。泡です。
シャンパーニュの泡と酸は、揚げ物の油を洗い流し、繊細な刺身にも寄り添う。「何にでも合う」にいちばん近いワインだと思っています。
星付き時代、前菜からデザートまで泡だけで通す常連さんがいました。最初は驚きましたが、6年見ていて、あの方の皿が泡に負けた場面を見た覚えがありません。
わが家の冷蔵庫には、前に記事にしたルイ・ロデレールのコレクションがいつも1本寝ています。
迷った日の保険としては少し贅沢ですが、この1本に外された記憶がありません。
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今夜の献立を、ちょっと思い浮かべてみてください。お皿の上は、何色ですか。
その色をグラスに移すところから、料理合わせの練習は始まります。理論書を開くのは、そのあとで十分ですよ。

